あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2

トンちゃん(以下T)「あきちゃん、水、水ちょうだい。」

あき(以下A)「何よいきなり。どうしたの?そんなに酔っ払って 。」

T「忘年会ですよ、会社の。」

A「もうそんな季節なのね。やだやだ。やる事一杯あるわ。..... はい、水。」

T「ありがとう。あ〜、落ち着いた。これから多くなるな〜、忘年会。や なんだよね、せわしなくて。だからつい寄っちゃうんだよね、あきちゃん の所。」

A「それはどうも。だけど、せいぶしなきゃね。身体もたないわよ。」

T「大丈夫ですよ、まだ若いからね。」

A「まあ、イヤミかしら。っまあ、いいわ。それより何にしようか?」

T「そうだった。え〜と、ソフト ドリンクが良いからポカリスウェ ットにして下さい。」

A「あいよっ! お待たせ。」

T「どうも。あきちゃん、今かかっている音楽、何だっけ。エラ・フィッ ツジェラルドだよね。」

A「そうそう。<So in love>って曲よ、コール・ポーターの。」

T「そうか。良い曲ですね〜。確かミュージカルの中の一曲でしたよね。」

A「よく知ってるわね。<キス・ミー・ケイト>って言うミュージカルよ 。」

T「そう言えば今ブロード ウェイでやってますよね。」

A「そうよ。この前行った時、丁度プレヴューだったのよ。」

T「じゃあ、観てきたんだね、あきちゃんの事だから。」

A「当然じゃない。何しろ話題になってたから。」

T「でも、とっても古いミュージカルだよね。50年位経つんじゃないの ?」

A「そうなのよ。でもね、今回は去年のトニー賞を取った<Ragtime> に出ていたブライアン・ストーカー・ミッチェルとマリン・メイズが主役 と言う事で、大いに盛り上がってたわよ。」

T「それで良かったの?舞台は。」

A「っま、話しはいたって簡単。巡業している劇団員たちと、その公演し ているシェクスピアの<じゃじゃ馬ならし>とが同時進行していってね、 まあ、最後はお決りのハッピー・エンドってとこなんだけど。まあまあだ ったかしらね。」

T「良い曲は何しろ沢山あるでしょ。」

A「そうね。コール・ポーターってやっぱり凄い。名曲の連続よ。ダンス も、特に2幕目の始めに来る<Too darn hot>のシーンは圧巻だっ たわ。全体的には本当に良くできたミュージカルなんだけど、アッシには ね、キャスト ミスじゃないかな?て思えるのよ。」

T「誰がどんな風にちがったのかな〜。」

A「あくまでもアッシの中での事なんだけど、主役のB.S.ミッチェ ルがね、どう観ても違うんじゃないかと思っちゃったのね。芝居も歌もと ってもうまいんだけど、<アクの強さ>がこの芝居の主役であるフレッド の<アク>とは違うんじゃないかなって。はっきりとは言えないんだけど 、何かもやもやした物が残っちゃった舞台だったわね。」

T「そうなんだ。」

けんちゃん(以下K)「今晩は。あきちゃん、ビール。」

A「あいよっ! いらっしゃい。おしぼりどうぞ。」

K「コール・ポーターいいね。」

T「けんちゃんも好きですか。今、あきちゃんとコール・ポーターのミュ ージカルの話してたんですよ。」

K「キス・ミー・ケイト? あの話題の2人が出ている。」

T「よく知ってますよね。それなんです。向こうの舞台って話題に事欠か ないですね。」

K「話題と言えば、オードラ・マクドナルドの出ている芝居はどうだった のさ。」

A「<マリー・クリスティーン>ね。とっても期待してたのよ。何しろト ニー賞を3度も受賞してるでしょ。それに<蜘蛛女のキス>にでてたアン ソニー・クリベロも出てるし。劇場に入ったらね、中央に円形舞台。その 後ろに傾斜した舞台が続くのね。」

T「何か起こりそうで良いですね。」

A「それに、前から2列目だったのよ。一番前が補助椅子みたいだったの ね。限定公演だったからすぐチケットは売り切れちゃってるし、若干の当 日券の人が来るんじゃないかって思ってたら何時まで経っても来ないじゃ ない。すごく良く観る事ができるわって思ってたらね、芝居が始まると誰 かが座るじゃない。それもフランス人形みたいなドレス着て。」

T「やっぱりおしゃれして行くんですね、向こうの人は。」

A「それが違うの。役者さん達だったのよ。そこから舞台に上がって芝居 するのよ。アッシらの正面には階段状の舞台があったんだけど、それもこ の芝居の出演者が待機する席だったのよね。」

K「面白いね。ところで、肝心な出来はどうだったのよ。」

A「ギリシャ悲劇の<メディア>を基に作られているんだけど、つまり、 <子殺し>がテーマになってるのね。」

K「昔、マリア・カラスが似たような映画やってなかった?」

A「パゾリーニの<王女メディア>でしょ。つまらない映画だったわ。暗 くてね。マア、テーマがそうだから仕方ないのかもしれないけど。カラス 、何であんな映画に出たのかしら。」

T「つらなかったと言うよりダルかったんですね、きっと。」

A「そうかもね。話しを元にもどして、この舞台はね、100年ほど前の ニュー オリンズのクレオール社会と言う設定なのよ。」

K「クレオールって言うと、フランス人の割合が多いって言うあのクレオ ール?」

T「けんさん、良く知ってますね。そんな事。」

K「まあね。」

A「だから、その事をちゃんと知ってないと解らないのよね。だから、あ んまり細かい事言えないんだけど、全体の印象はと言うと、音楽は平凡で 、と言うより前に聴いたことがあるメロディーラインが多くてね。舞台左 側上方にパーカッションを置いて、そのリズムでアフリカン・フレンチの 雰囲気を出したかったんだと思うんだけど、ちょっとね。出演者は皆、力 演なんだけど。アッシだたらもっと出演者を減らしてやりたいわね。」

K「出ました出ました。あきちゃんのアレンジャーとしての意見が。」

A「当たりまえじゃない。演出家になんて成れてたらこんな所で店やてま せん。観てるだけだから、いろんな事言えるんじゃない。それにしても、 リンカーン・センターでやる芝居は難しいのが続いたわね。」

T「去年も言ってましたよね。たしか、<パレード>でしたっけ?」

A「本当にね。ちょっと話はずれるんだけど、昔よく来日公演で来ていた 、ジェニファー・リ・ウォーレンが出演してたのには驚きと感激だったわ 。ここでも頑張ってるんだてね。」

K「楽しいミュージカルはなかったの?」

A「あったわよ。<プッティング・イッツ・ツゥゲザー>。」

K「それって、ちょっと前にオフでジュリー・アンドリュースが出て話題 になったやつ?」

A「そうそう。」

T「じゃあジュリー・アンドリュースがでてるんですか?」

K「彼女それどころじゃないんだってば。手術ミスで声が出なくなっちゃ うかもしれないんだってよ。ねえ、あきちゃん。」

A「その心配は無くなったらしいけど心配ね。それでね、このミュージカ ルにはジュリーの親友で、昔一緒にTVショーをやってたキャロル・ バーネットって言う人が主役でオンに持ってきて公演してるのよ。」

K「ソンドハイムの曲を歌っていくレビューだよね。」

A「そうよ。とても楽しめるステージよ。出演者もキャロルを始めとして <ラ・カージュ・オ・フォール>や<サンセット・ブールバード>でいい 役を演ってたジョージ・ハーンに、<美女と野獣>で野獣を演ってたジョ ン・バロウマン。先頃まで<シカゴ>に出てたルーシー・ヘンシャル、TV や映画で活躍してるブロンソン・ピンコットの5人でしょ。」

K「すごいメンバーだね。それじゃ楽しかったでしょう。」

A「それがね..........」

T「また何かあったんですか?まあ、あきちゃんのアレンジャーとしての 意見を聞きましょうか。」

A「とっても楽しかったの。でもね、この舞台、やっぱりオフ・ブロード ウェイ向きだなって感じたのよ。広すぎちゃって、劇場が。」

K「そう言うの解るな。あるよね、何でこんなでかいところでするのかな ?みたいな事って。」

T「それであきちゃんもこんなに小さい所でやってるんですね。」

A「そうなのよ。アッシには丁度これ位いのスペースがあってるのよね。 だからトンちゃんも自分の身体の大きさにあった飲み方しないと、何時も 酔っ払ってばかりになっちゃうわよ。」

T「あっ、やられた。そうします。そんな所で、お勘定お願いします。」

A「アイヨッ。ありがとう。」



おわり


*登場人物は全て仮名です。



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#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 〃分りやすいって素晴らしい〃の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記