<待ち人来らず>の巻

なぎ介(以下N)「あ〜面白かった。あきちゃんもう見たよね、<シ ックス・センス>さあ。」

あき(以下A)「それがね、まだなの よ。チケットは買ったんだけど、早く行かないとね、終わっちゃうわまた 。」

N「ありゃ、ありゃ。よくあるよね、あきちゃん。そんな時は無駄になら ない様に2〜3日前に連絡してよ。俺行きますから、ね。」

A「でもさ、分らないじゃない。終わる前日に行けるかもしれないし。だ からついつい持っちゃったままにして結局無駄になっちゃうのよね。絶対 に行けないって分ったら連絡するわよ。」

やっちゃん(以下Y)「それだったら俺にもして下さいよ。まあ、行 けるかどうかは連絡くれないと分らないけど。でも、どっちかって言うと 演劇の方が良いんだけどな。」

N「バ〜カ。あきちゃんが演劇だったら行かないわけないじゃんかよ。」

Y「だからさ、もし、もしもだってば。」

A「まあ、無いんじゃないの。風邪でもひいてぶっ倒れない限りは。」

N「ほら、言っただろ。あきちゃんてさ、芝居はどんな事があっても行く タイプだけどさ、映画はどっちかっていうとチケットだけ早々と買って、 すぐ行かないで結局無駄にしちゃう事が多いんだよね。買わなきゃいいの にさ。」

A「あ〜んた、アッシだって、最初は絶対に見たいからチケット買うのよ 。でもね、映画って芝居と違って日にちが指定されてないじゃない。だか らついつい後回しになっちゃうのよね。それに時間も問題の一つなの。」

Y「時間って、一日に何回もやってるじゃないですか。」

A「何回もやってたって丁度良い時間を探すのが大変なのよ、アッシには 。」

N「そうだよね、あきちゃんの場合、きっと一人じゃないだろうから、映 画の後食事だろ、その後お店だもんね。時間のやりくりを考えちゃうんだ よ。」

A「何言ってるのよ。一人で行く事の方が多いわよ最近は。」

Y「と言う事は、前までは二人で行ってた、と言う事だよね、やっぱ。」

N「やっちゃん見てないのG誌。載ってたじゃん、あきちゃんの記事 が。絶対あれ、あきちゃんだよね〜。ほら、最高のデートってコーナー。」

Y「そう言えば見たよ、見た。寒いところにいる鳥の名前って、..... 。」

A「いいじゃないのよそんな事。またアッシと二人で映画でも見てくれる 人を待つ事にでもするわ。」

Y「なぎ介、お前は今日の映画、一人だったのかい?」

N「やだな〜。一人の訳ないじゃないですか。マッちゃんと行ったんです よ。ちょっと友達と約束があるからって先に行って待っててって。」

Y「そうなんだ。良いよね、幸せな人は。俺も誰かと芝居とか、映画とか 一緒に行きたいもんだね。」

A「それじゃ何か探して誰か誘わなきゃダメよ。」

Y「そうか。あきちゃん、2月頃何か良い芝居ありそうかな?」

A「そうね、結構あるけど、何しろチケット売りだしちゃってるからね〜 。とりあえずトライしてみたら?」

N「何かあります?俺も参考にしたいんで。」

A「まず、去年演った、つかこうへいの<蒲田行進曲>ね。」

Y「ジャニーズ事務所の二人がでてるやつだよね。でも、チケット無いん じゃないの?」

A「まあ、無いでしょうね。」

Y「そんな、あっさり言わないでよ。」

A「でも、当日券があるかもよ。誰かの為なら、当日の朝早く行って当日 券買う位の心構えがなきゃね〜。」

N「そうだよ。それにしてもマッちゃんおそいな〜。」

Y「他には?」

A「そうね、チエホフの<三人姉妹>なんてどうかしら?舞台をね、昭和 の10年代に置き換えて書き直しているんだけど、風吹ジュンをはじめ、 銀粉蝶、喜多嶋舞の3人姉妹を中心に進んでいく悲劇ね。」

Y「悲劇?」

A「そうよ。だってチエホフですもん。生きている事への疑問。苦しむの は何の為なのか?っていう疑問を抱えて生活している3人の姉妹の話しだ もの。」

Y「それちょっとパス。暗すぎだよ、暗すぎ。そんなの観に行っちゃった ら観終わった後どうして良いか分らなくなっちゃうよ。」

A「そう?良いと思うんだけど。じゃあ、<奇跡の人>なんかどう?」

N「ヘレン・ケラーね。このポスターのやつでしょう。大竹しのぶと菅野 美穂。すごい顔合わせだよね。これ観たいんだよな〜。」

Y「どっちがヘレンでどっちがサリバン先生なの?」

N「そりゃ決ってるじゃン。大竹しのぶがヘレンだよ。ん〜ん、でもそれ じゃ菅野美穂が.......」

A「大竹しのぶがサリバン先生よ。でもさ、これどちらがどっちの役演っ ても面白そうよね。」

N「何か大竹しのぶがヘレン・ケラー演った様な記憶があるんだけどな〜 ?」

A「演ってないのよ、それが。演ってる様に思ってたわ、アッシも。でも 演ってないの。それも観てみたいけどね。」

Y「これもチケット大変そうだな。」

N「あきちゃん、これはどうなの?南河内万歳一座?何?これ?」

A「ああ、アッシの大好きな大阪の劇団よ。<流星王者>って言う新作な んだけど、20世紀をいろいろ体験していく旅人の話しなのよね。あんま り詳しくは分らないんだけど。」

Y「阪神大震災をテーマにした<夏休み>っていう作品は良かったよね。」

A「あら、観たんだ、やっちゃん。本当に良かったわよね。でも、その後 の作品、良かったりつまらなかったりでさ。今度はどうなのかって。だけ ど観に行くのよアッシは。」

N「これなんかどうなの?<浅草パラダイス>。何か面白そうだよね。中 村勘九郎に藤山直美に渡辺えり子。それに柄本明、寺島しのぶ、ありゃ、 ありゃ山口崇まで出ちゃってるよ。」

A「笑って泣いてって所かしらね。」

Y「良さそうじゃん。ちょっと見せて。え〜と、あれ?これでも夜の部4 時半開演だよ。休みの日じゃないと観れないじゃン。」

A「そうなのよね、誰に観てもらおうって言うのかしらね、全く。大劇場 ってだからイヤになっちゃうのよ。」

N「その点、小っちゃな所は良いよね。 役者の目の動きや指先までちゃんと観れるもん。」

A「それだったらこれよ、これ。<ゴドーを待ちながら>なんて良いんじ ゃないの?スタジオ・コクーンよ。とっても小さな空間。普段は稽古場な のよね。」

Y「緒方拳?この人、舞台にもでるんだ。串田和美は解るけど。」

A「あ〜んた、何言ってるのよ。緒方拳ってね、元はと言えば新国劇出身 の役者なのよ。元々は舞台なの。」

Y「深刻な劇を演ってたんだ。じゃ、これもパス。」

A「バカね〜。深刻劇じゃなくて、新国劇。今は無いんだけど、島田正吾 っていうおじいさんの役者がいるでしょ。」

N「ああ、シラノ・ド・ベルジュラックを日本人に置き換えて一人芝居し たあのお爺さん。」

A「そうそう。彼らが中心になってあった劇団なのよ。<国定忠治>とか 、<一本刀土俵入り>とかさ、代表作がいっぱい有ったのよ。」

Y「へ〜。じゃあ、この芝居も時代劇か何かかな?」

A「これはね、ベケットっていう人が作った不条理劇の傑作よ。ひたすら にゴドーという人物が来るのを待ち続けているヴラジミールとエストラゴ ンの二人の物語。」

Y「ただただ待ち続けるのか。これもパスかな?俺には。」

A「でも面白いと思うんだけどね。アッシは好きよ、この台本。いろんな 人が演じるごとにいろんなゴドーが現れるの。今度はどんなゴドーが現れ るのかしら。とっても愉しみだわ。」

N「それにしてもマッちゃん遅いな。もう帰らなきゃいけない時間じゃン よ。」

A「それでね、ゴドーは結局現れないんだけど、ただひたすら待ち続ける のよね、あの二人は。」

Y「結局現れないんだ。<待ち人きたらず>ってとこですかね。今の誰か さんみたいだけど。」

N「もういいです。俺先に帰りますからマッちゃんが来たら、もう帰った って言ってもらえますか?」

A「わかったわ。じゃあ、1200円。ありがとね。」

N「それじゃお休みなさい。」

Y「お休み。<待ち人来たらず>か。まあ、なぎ介は待つ人がいるからま だ良いか。俺も早く見つけなくっちゃ。」

A「馬鹿ね〜あんた。早く見つければ良いってもんでもないでしょうが。 そんなことして見つけても、今度はあんたが<待ち人来らず>になっちゃ うかもよ。」

Y「それもそうだね。でもいろいろ参考になったよ。ありがとね。じゃあ 、俺も帰るわ。あきちゃんにも待ってる人がいるだろうからさ、その人が 来ないうちにっと。」

A「そうなの。もうすぐ来る時間なんだけどね。」

N「ゴメン、ゴメン。忘れものしちゃった。」

A「な〜んだ、なぎ介か。」

N「え!?」

Y「あきちゃんも<待ち人来らず>らしいよ。ナ・ン・ダ・カ。」 A「あ〜んた、煩いわよ、早く帰りなさい。はい、ありがとうございまし た。」

Y「はいはい。それじゃね。お休み。」

A「お休み。ありがとね!」


おわり
*登場人物は全て仮名です。
*今回紹介したお芝居リスト
  1)蒲田行進曲    青山劇場
       2/4〜20    
  2)奇跡の人   シアター・コクーン
       2/28〜3/26 
  3)三人姉妹    世田谷パブリックシアター
       1/29〜2/8
  4)南河内万歳一座  シアタートップス
       2/10〜16
  5)浅草パラダイス   新橋演舞場
       1/31〜2/26
  6)ゴドーを待ちながら 
       2/9〜12  STUDIOコクーン
       2/15〜23 TOKYO FMホール
         以上です。



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#16 〃感動するって素晴らしい〃の巻
#15 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2
#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 〃分りやすいって素晴らしい〃の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記