IMPRESSION
私、村上がメーカー、排気量、新旧など車種にこだわらず一般の人よりたくさんのバイクに乗れる立場を利用して、私なりの試乗インプレッシヨンを、語らせていただきます。皆さんのバイク選びの御役に立てればうれしいです。
今回は、GILERA GP800です。スクータースタイルのボディにVツイン840ccエンジンを積んだ正に世界最強。バイクの世界の勢力図を塗り替えるかもしれない注目の一台です。
GILERA GP800
4サイクル90°Vツイン840cc
\1,358,000
イモビ、インジェクションデジタル表示画面と、最近のバイクらしくコンピューターフル稼働の電装関係。
エンジンが大きく車体は意外にコンパクトなのでメットインスペースはヘルメット一個プラスアルファ。大きなエアダクト付きフルフェイスも入りました。
最終減速はT-MAXと同じチェーンを採用。ヤマハと違いむき出しなところが少し心配ではありますが、普通の大型バイクと考えれば、それでいいのかと思わないでもありません。
ファーストインプレッション
ネクサスがT-MAXに対してある部分だけでも突出した部分を作り、その存在価値を確保したのに比べ、今度のGP800は、あらゆる部分でライバルを上回ることを目的としていることは明らか。随所にT-MAXを研究し尽くしたところが見受けられます。
まず、またがったポジションがT−MAXとよく似てます。そして、走り出してみるとさらに設計者の意図がより深く理解できます。スイングアームを持たせ独立したエンジンユニットを車体の中央に置き、前後の重量配分を無理なくバランスさせた結果、ネクサスのようにある意味「癖」を感じさせない、ナチュラルなハンドリング。これもT-MAXが背後に居るのを強く感じます。きわめて素直で乗りやすい。だれが乗ってもすんなり普通に乗ることが出来るでしょう。
一番違うのは、やはりパワー。T-MAXの倍は言い過ぎですが、3割り増しくらいパワフルになったと言ってもいいでしょう。コイツは強力です。どこからでも開ければググッと出て行く。
早くも全開してみました
5月の17日、よみうりランドで成川商会さんと協賛各社の合同試乗会が開催されました。当店もお手伝いに行き、私は試乗の皆さんの先導役を務めました。午前は通算で1時間。午後は1時間半をほとんどコイツに乗ってました。
狭いコースでしたが、皆さんになるべくGP800のパワーとハンドリングを楽しんでいただけるように、GP800を先導するときはなるべく全開で走っておりましたので、午後には、もうすっかり振り回せるようになりました。ジムカーナに使ったようなものです。これでこのバイクについて書けると自信を持ちました。
私自身、T-MAX、ネクサス500と乗り継いできた経験から言いますと、コイツなら碓氷の旧道でもいろは坂の下りでもいけます。T-MAXよりコンパクトな車体と深いバンク角でジムカーナ的走りも余裕でこなします。コーナーの立ち上がりでリアがパワースライドすることが何回かありましたが、滑り出しも急ではなく、パニックになるほどではありません。
直線の終わりは全開で100km/h前後からのフルブレーキング。制動力も充分です。下の写真でタイヤの端近くまで使っているのがお分かりいただけると思いますが、しっかりした足回りは箱根の高速コーナーでも威力を発揮すると思われます。ターンパイクだったらタイヤの端を最後まで使い切りますよきっと。
現時点では相当な部分でT-MAXを凌駕していると言い切っても問題無いでしょう。但し、乾燥で245kgの車重は止まると重さを感じる人も居ると思います。
おそらく200km/hを越すと思われる最高速も早くテストしてみたいですね。
ユーザーの声
当店納車第1号の「ぼいす小林」氏。アプリリアのSRシリーズやジレラランナーなどをいじくり倒してきた人。今回は逆車のT-MAXからステップアップ。現在はMVアグスタと2台体制で使用中。
「850ccVツインのパワーは圧倒的。T-MAXとは比べ物になりません。コーナリングも速そうなので早く峠を走ってみたいです。最高速はまだ試してませんが、160km/hあたりからの加速は楽しいです。ウイークポイントは、やはり車重。乗り出してしまえば気になりませんが、たまに取り回しに重さを感じることがあります。今年の夏はコイツで北海道へツーリングに行きます。」
オプション装着
純正オプショントップケース
¥78,000
ワンタッチで取り外し可。ヘルメットが2個入る特大サイズです。
街乗りに使ってみました
首をなが〜くして待っていた当店の分がやっと入荷。早速ナンバーを取って都内を乗ってみました。なんといっても違うのがスタートダッシュ。さすがにVツイン850cc。その他の乗り物があっというまにミラーの中で点になる。ナナハンより大きな排気量ということを証明しています。
心配していた重量も乗ってしまえばまったく気になりません。ちょっと目黒方面へお使いに出掛け、個人宅を探しながら乗っていったのですが、道を間違えた時、押して「歩行者」になって初めて思い出す位です。
振動はほとんど無いのですが、「Vツイン」の鼓動はしっかりと残されていています。元々私はマルチより単気筒や2気筒エンジンが好きなせいもあると思いますが、これがまたなんとも心地良い。
そして、ナチュラルなハンドリングはリッターバイクや、他のスクーターから乗り換えた人でも何の違和感も無く乗れるでしょう。早くツーリングに使ってみたいです。
ネクサスと大きさを比べてみました
長さも幅もほとんど同じくらい。乗り比べた印象では、ミラーの出っ張りのせいで、ネクサスの方が幅を感じるかも。
ネクサスオーナーのご意見
当店で使っていたネクサスの現オーナー久保田氏。大型免許取得後GP-1からネクサスに乗り換えて、高速を使ったロングツーリングに出掛けることが楽しくなったそうです。
「GP800の加速の鋭さにびっくりです。ハンドリングもネクサスより素直で、とても乗りやすい。シートもネクサスよりやわらかめなので足つきもこちらのほうが良いです。さすがに押したり引いたりする時にはプラス50kgの重さを感じますが、ネクサスから乗り換えたら全てにおいて楽チンという印象を一番強く受けました。」
新型T-MAXと比較してみました
皆さんも一番気になるところだと思います、'08T-MAXと比べてみました。
大きさはほとんど変わらないですね。実際の数字の差は分かりませんが、ぱっと見は同じボリュームです。
メットインスペースもヘルメット一個プラスと言った感じでGP800とほとんど同じ。
実際に乗ってみる。今回のT-MAXはご同業のオートショップサチさんのバイクをお借りしました。3代目となったT-MAXはより熟成され、グレードアップしています。今回一番の進化はハンドリング。重心が上に来た感じでヒラヒラとコーナーリングが決まり、切り返しも驚くほど軽くなりました。これなら峠は速く走れるでしょうね。エンジンのパワー感は以前のモデルとさほど変わらないものの、正常進化しているのは確実。鈴木店長の話では、最高速はメーター目いっぱいの180km/h近くまで行くそうです。
取材協力
オートショップサチ
東京都江戸川区南葛西4-2-2
03-3689-4528
さすがにGP800から乗り換えると非力感は否めませんが、排気量が示すそのままの印象はちょうど750ccから400ccのバイクに乗り換えたような感じです。実はこれで充分なんだと言えなくもありません。細かい部分も大変良く出来てるのも、さすがです。良くも悪くもGP800のお手本、世界基準です。
最高速にチャレンジ
外房まで皆さんと初のツーリング。走行距離も500kmを越えていよいよ全開です。高速道路でアクセルフルオープン。楽チンこの上なしですね。振動もなく、200kgオーバーの車体をぐいぐい引っ張ります。あっさりとメーターの針が最後の目盛りまで到達。条件のいい所ではメーターを振り切ってしまいました。さすがにこれにはびっくりです。ここまで出てくれれば充分過ぎます。因みにメーターの目盛りはフルスケール220km/h。
今回は峠というほどの道はほとんどなく、比較的アールの大きな中速コーナーの場面が多かったのですが、安定感は抜群。安心して突っ込んで行けます。走る人の技量やペースによって、リアスプリングの硬さを調整してあげると良いかもしれません。
もはや、スクータースタイルのバイクとしては「反則」に近いこのバイク。この形が必要なのか?という疑問が浮かんでこないでもないです。アプリリアのMANAやホンダのDN-01にも逆の意味で同じことが言えると思います。選択肢が広がるということはうれしいことですね。
マフラーを変えてみると
社外品のマフラーを取り付けてみました。オールチタン素材でエンドのリバースコーン部分のみカーボン。イタリアのレオビンチ製。エキパイから後ろ部分のスリップオンタイプながら、構成部品と取り付け作業はほとんどフルエキに近いものです。
¥123、060
マフラーステーも不要になり、合計でノーマルよりも7〜8kgの軽量化。すっきりと、より挑戦的なルックスに変身。
今回のGP800は当店のデモ車ではなく、久保田氏のバイク。ネクサスで来店し、GP800を試乗したら一発で気に入って乗り換えてしまった人。
「明らかに取り回し時の軽さを感じるようになりました。エンジンの吹け上がりも、より軽くなりアクセルのつきが良くなったのを感じます。音はVツインらしくなって気に入っています。ただし、バッフルを外す気にはなりませんね。早く最高速を試してみたいです。」
初めてのロングツーリングに使ってみました
皆さんと青森までロングランに出かけたゴールデンウイーク。GP800にとっては初のロングツーリングです。これまで、日帰りツーリングでは見えてこなかった細かい発見の連続でした。
積載性
GPには純正のトップケースがオプション設定されてますが、現在まで取り付けておりません。ツーリングの企画が持ち上がったときが休みの間近で、そこから注文しても間に合わないというのもありましたが、「まあ、無くてもいいかな。」というのが本音。今回のようにリアにバッグを縛り付けるのも「バイクっぽくて」かっこいいと思います。シート下にカメラやナビなど、濡れては困るものを入れておいて、バッグの中は二泊三日分の着替えとお化粧道具を入れて出かけました。タンデムで出かける場合だったらトップケースは必須ですね。
燃費
長丁場を走るとちょっと面倒なのが給油。縛っておいたバッグをいちいち外してシート下の給油口を出さなければなりません。ただし、燃費は今回参加した中では一番優秀。2000km走って85リットルと、リッターあたり22km位走る計算になります。18リットルタンクが空になるまで走ると300kmは余裕でペースを落とせば400km無給油で走行可能かもしれません。青森まで700kmなので途中の給油は3回で十分。同行諸氏のリッターバイクと比べると皆さんが4回給油するところを3回で済む感じです。
高速走行
高速は余裕のパワーで楽チンそのもの。初期型T-MAXが160km/h付近だと結構いっぱいいっぱいに近いのに、GPだとそこからさらに加速できるので精神的にもすごく楽。排気量のなせる技です。
電動スクリーンをウィ〜ンと動かしながら走ってみました。最初、いつものように低くしていたのですが、一番上にすると風の抵抗が無く非常に楽なことに気づいたのは帰りの高速でした。遅い。
コーナーリング性能
下北半島を一周した2日目、念願のコーナー攻め初体験です。千葉へ日帰りで出かける程度しか乗ってなかったので、流すペースでは走ったことはありますが、本気で攻めたのは初めて。ちょっとリアの腰砕け感を感じていたのでリアサスのバネを一段階強くして出かけました。サスのセッティングはこれでバッチリ。
独特の特性に最初はちょっと戸惑いました。高速コーナーは問題なくブインと行けますが、Rが小さくなると、感じるのはやはり「車重」。ネクサスのようにエンブレが効かないので、パーシャル状態でコーナーに突っ込むと押さえが効かず、コントロールできません。最初は膨らんだり、異様に減速したりの繰り返し。
しかし、その日の午後、下北半島の西海岸沿いを攻める頃になるとすっかりコツをつかめました。下の写真はすでにクリッピングポイントを過ぎて立ち上がりに近い時点ですが、まだブレーキランプが点いてます。いわゆる「スクーター乗り」。リアブレーキを引きずりながらアクセルを開け、リアタイヤにトラクションをかけながら走ってます。このように走ると低中速コーナーも結構なペースで走れるようになります。バンク角はここまでで限界、これ以上やるとスタンドガリガリ。公道では十分な角度です。結構寝てるんですよ。
今回ツーリングに使ってみて、やはり一番感じたのは「楽チン」です。私自身、こんなに長い距離を短時間のうちに走るのは久しぶりでしたが、想像していたよりはるかに楽だったし、楽しめました。どんどん良くなるバイク性能に感謝。
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