<涙でサ・ヨ・ナ・ラ>の巻

あき(以下A)「は、は、はっくしょん!!!」

ひでみ(以下H)「大丈夫なの?ずっとくしゃみばっかりしてるじゃ ない。」

A「ゴメンね。ちょっと昨日の雨でさ、風邪でもひいたのかしらん。」

H「また風邪でもひく様な事してたんでしょう?」

A「そんな事でひく様だったら何時でもどうぞっていう感じよ。」

まさお(以下M)「こんばんわ。」

A「あら、まさおちゃん、いらっしゃい。」

M「チンザノ赤をロックで。」

A「あいよっ!」

M「あきちゃん、良かったです。本当に。今日ね、ジミー・スコットに行 ってきたんですよ。本当に良かった。」

A「アッシも先週行ってきたわ。良かったわよね。」

M「何か別世界にいる様な感じでしたよ。あんな歳で本当に凄いですよね 。」

H「さっきのCDの人?ジミー・何とかって?」

A「そうそう。あんたが女みたいな声だねって言ってた人よ。」

H「でも良かったよ。あの人のライブなんだ。」

M「そうなんですよ。原宿の<キー・ノート>って所でやったんですけど 、勿論超満員でね、お客も最初からノリノリだったんです。」

A「そうだったわね。でもアッシはそのあまりにもノリノリな所が耳障り だったわよ。だってさあ、こっちはもう少し、落ち着いて聴きたいじゃな い。最初からノリノリって聖子やユーミンのコンサートじゃないんだから さ。ハックション。」

M「風邪ですか?」

A「うん、ちょっとね。」

H「昨日風邪ひく様な事したらしいよ。」

A「そんな事してません。この世界、ウワサは怖いんだから余計な事言わ ないでよね、ったく。でも、ジミーもこれが最後の来日でしょうね。」

M「そうですよね、それを思うと涙が出てきそうです。彼自身もそういう 気持があったのかな?ノッてたけどアンコールでは涙が浮かんでいたよう な気もするな。<みなさん、さようなら>って言ってる様だった。そう言 えば、あきちゃん、今月はいろいろ行くって言ってたけど、何か良いのあ りました?」

H「トゥーラン・ドットはどうだったのさ。」

A「そうね、演出が変ってたわ。アッシは結構好きだったけどね。」

M「俺、TVで観ましたよ。勅使河原さんの演出でしょ。何か変、で したよね。俺はあんまり好きじゃないな、ああいうの。」

A「っま、分れるでしょうね、ああいうの、好き嫌いが。」

H「結構醒めた言い方だね、あきちゃん。」

A「そうかしらん。ああいう有名なオペラってさ、<こうじゃなきゃいけ ない>みたいな所ってあるじゃない。そういう人が観たら、<なんだ、こ りゃ>みたいになっちゃうと思うのよ。でも、よく観ているとさ、民衆を 演ったコーラスの連中の演出なんか今までの公演では見られなかったほど 素晴らしかったけどね。主役級のソリスト達はリューを演った陳素我を除 いてはそんなに凄くはなかったけど。」

M「なるほどね、TVで観てるとあまり分らなかったりするけど、実 際の舞台だと全体を観る事が出来るしね。」

A「そうなのよ。全体の中での民衆の演技。オペラって演技は二の次にた いな所があるじゃない。でも、こうして演出されると、やっぱり演技が伴 うと数倍素晴らしくなるんだなって実感させられるのよね。」

H「そう言えば俺ね、<アイ・ゴット・マーマン>行ったんだけど、3人 とも良かったんだけど特に諏訪マリーの演技にはジ〜ンとさせられるもの があったな。」

M「え〜、手に入ったんですか?チケット。羨ましい。赤坂ACTシア ターでのスペシャル・ヴァージョンだったんですよね。行きたかったな〜 。」

H「スペシャル・ヴァージョンって言っても最後がビッグ・バンドになる だけなんだけどね。それよりも舞台に上げられちゃったコ、結構イケイケ だったんだよね。」

A「なに観に行ってるのよ。まあ良いけどさ。マリーさんのパートは徳な 所があるわよね。笑わせるだけじゃなくてジ〜ンとさせる所もあってね。 でもあの劇場なんとかならないのかしら。何か仮設ぽいのよね。それにこ の芝居には大きすぎるわよ。やっぱりあの芝居にはもっと小さな小屋が似 合ってるわよね。」

M「その点、野田秀樹なんかはうまいですよね。3〜4人の芝居は小さな 所でするし、何人も出てくる芝居だと中劇場クラス。この前も<カノン> に行ったんですけど、丁度良い広さだったと思うな。」

H「え〜、手に入ったの、チケット。俺全々ダメだったんだよね。3時間 も電話してたのにさ。面白かった?」

M「う〜ん?その前が<パンドラの鐘>だったじゃないですか。でも良か ったですよ。鈴木京香がとっても綺麗ででね、唐沢もすっごく良かったで す。」

A「そうだったわね。アッシも鈴木京香は意外だったわ。あの人何時も驚 かせてくれるわよね。この間の映画ではスッピンを披露したしね。それに 唐沢ってとっても野田の芝居に合っているのよね。野田=唐沢のコンビっ てはずれがないものね。」

M「ひでみさん、当日券があるから並んだらいいじゃないですか。」

H「当日券あるんだ。まだ2週間程あるから頑張ってみようかな。」

A「そうしなさいよ。なんでも努力しなきゃ。ハ、ハ、ハ、ハックション 。」

M「本当に大丈夫?昨日の雨にでも打たれたんですか?」

H「だから、風邪ひく様な事してたんだってばさ。」

A「だから、違うって言ってるじゃないの。まさおの言う通りなのよ。凄 かったじゃない、昨日の雷雨。昨日ねジャンジャンに行ってたのよね。そ れで、あそこってさ、開場まで外で並ばせるじゃないの。5時頃行ったん だけど丁度その頃よね、雨、一番凄かった時って。6時半まで1時間半も いたもんだからさ、ハックション。」

H「最後の公演だったもんな。あきちゃんは絶対に行くって思ってたけど 。でも、ちゃんと観てきたんだろ?最後のジャンジャンも。」

A「勿論。」

M「寺山の芝居ですよね。確か流山児事務所ですよね。」

A「そう。<血は立ったまま眠っている>っていう芝居なんだけど、劇場 の中は半分位解体されてて、客席も俄仕込みで、でも超満員。」

H「じゃあ、何とも言えない雰囲気を味わってきたんだね。」

M「芝居の方も盛り上がったでしょうね。」

A「そうね、アッシ等には解るのよ、あの時代だからね。それでも、もう 、チョット古いかしらんと思っちゃったわね。アングラだったのよね、当 り前だけど。芝居は良かったのよ。でも時代を感じたわ。あの時代に生き ていた人じゃなきゃ解らないだろう時代をね。でも、行って良かった。ジ ャンジャンに<サ・ヨ・ナ・ラ>って言えてさ。」

M「何だかしんみりしちゃいましたね。」

H「あきちゃんの事だからいろいろ想い出があるだよな、きっとさ。」

A「心情的には涙が出そうだったけど、これも自分にしかない想い出だな って思うと、納得できるしね。」

H「て言うことで、あきちゃんもジャンジャンに涙でさよならしてきた事 だし、おれはこの辺でさよならって事で、チェックしてもらおうかな。」

A「あいよっ。ありがとね。」

M「じゃあ、俺も行くわ。」

A「ありがと。気を付けてね。お休み。」


おわり


*登場人物は全て仮名です。



Back Number!

#20 "至福の時ってどんな時"の巻
#19 "あなたは誰に?"の巻
#18 "これからはアジアの時代かな?"の巻
#17 "待ち人来らず"の巻
#16 "感動するって素晴らしい"の巻
#15 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2
#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 "分りやすいって素晴らしい"の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記