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 私、村上がメーカー、排気量、新旧など車種にこだわらず一般の人よりたくさんのバイクに乗れる立場を利用して、私なりの試乗インプレッションを、語らせていただきます。皆さんのバイク選びの御役に立てればうれしいです。

 今回は、久しぶりにその名前を聞くメーカー。新生モトモリーニのMOTOMORINI Scranmblerです。

MOTONORINI Scrambler
水冷Vツイン1200cc
¥2,494,800





素性のよさそうな87°水冷Vツインエンジン。



スタイル、音とも、これで車検に通るなら変える必要もなさそうなリバースコーン付きショートメガホンを2連装。





オプションのバッグはワンタッチ装着。質の良い本革なのはさすがイタリア。シート形状も非常にきれいな仕上がり。




スクランブラーなのでフロント19インチとリアは17。メッツェラーのオフ兼用タイヤとエクセルリムを組み合わせたチューブレスタイプ。

乗ってみました

私のような青春時代が70年代から始まる人間にとっては馴染み深く懐かしい名前、モトモリーニ。堀ひろこさんが男たちの憧れで、ネモケンさんがライダースクラブの編集長をしていた頃ですね。当時はイタリアにバイクメーカーが何十社も存在していて、アプリリア、イタルジェットなどは、まだ小排気量車をアッセンブル生産する新興メーカー。モリーニ、ベネリなどは、バイク雑誌でしか見る機会がなく、貧乏学生には夢のような存在でした。しかし、80年代も後半に入ると、日本製の台頭でいつしか名前を聞かなくなったメーカーの一つです。

そんなモリーニが知らぬ間に復活していて、日本にも入ってきました。幸いにも乗らせていただけるということなので、詳しい事情も知らずにワクワクで乗ってみる。

いくつか種類があるようですが、今回乗ったのはスクランブラーモデル。基本的にはその他のロードモデルも同じフレーム、エンジンを使用し、スクランブラーだけはフロントが17から19インチに変えられキャスター角も寝かされているようです。エンジンセッティングも低速寄りなのでしょうか。
エンジンを掛けて跨ってみるとなかなかのシート高。普段私が乗っているムルティより少し低いくらいかな?ハンドルはムルティのようなコンペポジションではなく、すこし高くて幅もそれほどではない広さ。自然な姿勢がとれます。

油圧クラッチを握ってスルスルと発進。少し走ってからすぐに感じました。うわっ、コイツは乗りやすい。多分フロントの19インチホイールのせいかと思われますが、ちょっとフロントが後からついてくる感じではあるものの、何の癖もなく顔を向けただけでスイーッと曲がっていきます。ハンドリングの基本はヤマハMT−09とトレーサーの中間くらいでしょうか。しかし、リアにオーリンズ、フロントにマルゾッキの組み合わせは明らかにヤマハの物より質の高い、しっとりしたコーナーリング性能を見せます。私のムルティの前後オーリンズは明らかにオンロードのセッティングですが、コイツはちょっとスクランブラー風味なのかもしれません。土の上も走ってみたいですね。行けそうです。当然のことなのに、後から気が付きましたが、タイヤがオフロード寄りのパターンでした。それを忘れて全開してもフルブレーキングしてもまったく怖くない。

エンジンはドカティとは違い、3000回転以下でもギクシャクしない。ツイン独特のガサガサ感を残しつつ、Vツインエンジンを忘れてしまう乗りやすさ。パスパスと気持ち良い音が楽しくて、ついつい回してしまいます。試しにエイヤッと全開にしてみると、もちろん空冷の1000ccより力強くて速い。このタイヤでは怖いですが、ロードモデルだったら250km/h位出そうです。箱根に持ち込んだら最高ですね。速すぎもせず遅すぎもせず、たまにふらっと乗って出かけても楽しめるちょうど良いパワー感。

さて、良いことばかりの最高に楽しいバイクですが、大前提として200万円以上の価格という最大のハードルがあります。これは普通のバイクとは根本から考え方が違う概念で作られた物なのではないでしょうか。ホンダ、ヤマハはもちろん。ドカティとも違う。こういうものを仕上げたいから作っていったらこの価格になりました。という発想です。妥協という文字は無いのです。私は少しか乗っていませんが、「スゲー良いバイクだこりゃ。アグスタの世界だな。」と初めてアグスタF4に乗った時の印象が、すぐに頭に浮かびました。特にコンピューターを駆使しているわけでもないし、トラクションコントロールはあるもののABSも付いていないし、別段押し出しのきくスタイルでもない、どちらかと言えばシンプルなバイク。なのになんで?と思われるのではないでしょうか。

ちょっと説明に困ってしまうのですが、高級腕時計に例えたら分かりやすいでしょうか。BMWがロレックス。ドカティはブライトリングだとしますと、MVアグスタはパテックフィリップ。そして、このモリーニはバセロンコンスタンティンあたりでしょうか。多分作った人は「解かる人にだけ乗ってもらえばいいの。数を売ろうなんて考えてませんから。」なんて言っているような気がします。借りるのにも多少の勇気が必要ですが、機会がありましたら皆さんも是非どこかで乗ってみてください。きっと「こういう世界もあるのね。」と思うに違いありません。

※「時計に例えられてもワカンネーヨッ!!」というご意見を頂いたので、もうちょっと近いところで、4輪に例えたらどうかな?と、考えてみました。ケーターハム、ロータス、TVRあたりの立ち位置に居るのかと思います。上質で趣味の良い、大人の道具ですね。


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