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<良いものはやっぱりいいわ>の巻 |
秀ちゃん(以下S)「ほんと、頭きちゃうよな。」 あき(以下A)「何、怒ってんの?」 円ちゃん(以下E)「それがね、さっき綾戸智絵さんのライブに行 ってきたんだけど、そこでちょっとトラブッてさ。」 S「だって、聞いてくれる〜。40分も出てこなかったんだよ、ドリンク 。もういい加減にしろよっ!って感じ。」 A「あら、まあ、よくある事だけどさ、ちょっと気分害しちゃったわね。」 S「折角楽しもうと思ってたのにさ、ほんと、頭きちゃうよね。」 E「まあ、まあ、落ち着きなよって。」 S「ライブの楽しさも半減だよ、ったく。」 A「でも、半減したといっても、そのライブ自体はどうだったのかしら? アッシね、午後の部に行ってたんだけど、やっぱり何時もと同じく楽しん できちゃったけどね。」 E「まあ、楽しめましたよ、それなりに。あの人は良いですね。」 A「そうよね。お客さんを乗せてくれるもんね。秀もそれなりには楽しめ たんでしょ。」 S「まあ、それなりには。て言うかライブ自身は堪能したけどね。」 A「じゃあ、いいじゃないの。でも、アッシ笑っちゃったのよ。」 S「何?そんな所あったの?」 A「いやね、自分で自分の勘違いに笑っちゃったんだけどさ、一等最初の 曲って何だった?」 E「あれはですね、<オンリー・ユー>だったんだと思いますがね。」 A「やっぱり。そこでよ、アッシ自分で笑いころげちゃったのは。」 S「何笑ってたのさ、教えて〜!」 A「ピアノの前奏ね。あれよ。アッシまたこのオバハンやってくれた!っ て思ったのよ。あの前奏をきいて、アッシだけかしらん?平浩二の<バス ・ストップ>て曲思い出したの。」 S「何何何、その<バス・ストップ>って曲。」 E「私も知りませんね、その曲。」 A「あら!ここで年齢のギャップが出ちゃったわ。昔あったのよ、<バス ・ストップ>っていう曲が。結構ヒットしたのよ。まあ、一発屋さんだっ たけど。」 S「それでどうして?」 A「今も言った通りさ、アッシは前奏が始まってから唄い出すまで、てっ きり<バス・ストップ>だと思ってたのよ。まあ、このオバハン、本当に オモロイわ、って思ってたら<オンリー・ユー>だったじゃない。声出し て笑えないからお腹で笑ってたんだけど、苦しかったわね。」 E「でも、彼女のライブは本当に良かったです。」 A「あら、円ちゃん、さっきは<それなりに>って言ってたんじゃなかっ たっけ?」 E「まあ、そうなんですけど、色々思い出してきたんですよ。そう言えば 笑いの絶えないライブだったなって。」 S「だから良かったでしょ。最初はぐずってたんだよ、円ちゃん。何てっ たって今までクラシック一辺倒だったじゃない。頑固なんだからさ。」 A「クラシック好きな人に多いのよね。絶対クラシック以外は認めないっ て言う人。」 E「そんな事はないんですけどね、まあ、良いじゃないですか、楽しかっ たって言っている事だし。」 A「良いものは何時でも何処でも良い物なのよ。」 S「そんな良いもので最近観た物ってあるのかな?」 A「今月は結構あったわよ。まず、この前観たのが、劇団<ぺ〇ぺ〇>の 《真夜中のパーティー》ね。」 S「あれ?そんなに良くないでしょ。何か俺にとっては学芸会だったとし か思えなかったけどな。」 A「まあ聞きなさいよ。あれのさ、本が良かったって言いたいのよ。何時 までたっても色褪せる事のない本よね。」 E「そんなに。今度観てみようかな。」 A「一度は観るべき芝居だと思うけどね、アッシは。」 S「それから?」 A「今年は2回目になるんだけど、宮本亜門演出の<I GOT Merman >。今回はセカンドキャストを観てきたのよ。」 S「どうだった?今回のセカンドは。」 A「一人一人はさほど唄が上手だとは思わなかったけど、ハーモニーはと ても素晴らしかったわね。」 S「でもオリジナルはやっぱり凄いよね。凄い個性というか。」 E「そのミュージカルも良く聞きますね。相当評判が良いらしいけど、何 がそんなに良いのですか?」 A「アッシが思うにはね、前にも言った事があるんだけど、演出も勿論良 いし、キャストも良い。だけど、一番の成功を導いたのは、あの訳詩だと 思うのよね。」 E「訳詩ですか?」 A「そうそう。単に日本語に訳したわけじゃなくて、あの芝居の進行に合 わせて作っちゃったのね。だから、正確には訳詩って言わないのかも知れ ないけど。」 S「本当にストーリーを語っている様だったよな、そう言えば。」 A「あれは永遠に残る名作だと思うわ。宮本亜門はこの秋に演出した<太 平洋序曲>とこの<I GOT Merman>の2つ。これだけは見逃せませ ん、っていう感じかな。」 E「来年もありますかね?」 A「おそらく演ると思うけど。」 E「その時に期待しますか。」 A「是非、観に行って。」 S「そう言えば、この前さ、会社の友達と名作だからって言われて一緒に 行ったんだけど、ほら、トイレにも貼ってあるじゃん、<ゴドーを待ちな がら>って。」 E「行ったんだ。で、どうでしたか?私には何が何だかまるで分らなかっ たですね。」 S「そうでしょ、そうでしょ。まるっきり解らなくってさ、何やってるん だろうって、最後まで思っちゃった。それに長いしね。」 A「アッシもこの月曜日に観てきたんだけどね、アッシはとても面白かっ たわよ。」 S「そ〜う?」 A「アッシ、大好きなのよね、不条理劇って。」 E「あれ、不条理劇なんですか?」 S「不条理なんだ。それでね、な〜んにも解らないもんな。」 A「解っている事はただ一つ。」 E「解っている事なんてありましたっけ?」 S「あったっけ?」 A「何言ってるの、ちゃんとあるじゃない。《ゴドーを待っている》って 事。」 E「あ〜、それですか。そりゃそうだ。<ゴドーを待ちながら>ですもん ね。」 S「でも、解らなかったな。」 A「いいのよ、解らなくたって。でもね、その<解らない>って所がミソ だわよね。」 S「て、言うと?」 A「アッシ、この芝居、今年は2回目なのよ。以前は緒方拳と串田和美の コンビで、そして、今回は石橋蓮司と柄本明とのコンビでしょ。」 E「私は前者のを観たんですけど、ホンマ、解らなかったですね。」 A「だから、<解らない>って所がミソだって言ってるじゃないの。」 S「それって、どういう事?」 A「今回は、秀ちゃんの言う通り、すっごく長かったわよね。もともと長 い戯曲だけど、短くしようと思えばいくらでも短く出来るのよ、この芝居 って。でも、今回は3時間を越しちゃった。なんで、そんなに長いのかし らん?って、思ったし、あの1幕と2幕の終わりに出て来てゴドーからの 伝言を言う男の子が出てくるでしょ。あの子、何か気が付かなかった?」 S「え〜?<ゴドーさんは今日は来れないって>って伝えに来る子でしょ ?何かあったっけな?」 A「よく観てたら、あの子、1幕では普通の男の子だったんだけど、2幕 目に出てきた時にはお腹が大きくなってたのよ。つまり、妊娠してたんじ ゃないかなて。」 S「え〜!そうだっけ?全然気が付かなかったな。でもさ、違う子だった って考えられない?」 A「そうよね、台詞の中でも、違うかも知れないような事を言ってるわね 。」 E「だったら違う人だったんでしょう。」 A「あ〜、ヤダヤダ。だからあんたはつまらないのよ。あの子だけじゃな いじゃない。1幕目と2幕目じゃ、たった1日の違いなのにも関わらず、 柳に葉っぱが出ていたり、ポツォとラッキーの関係が変だったりって、解 らない事に解らない事が重なっている。」 E「益々解らなくなってきましたね。」 A「まあ、だから、その<解らない>って事の面白さ。そもそも、誰もが ゴドーを待っているわけではないし、何故、ゴゴとディディは待ち続けよ うとしているのかも解らない。ね、面白いじゃない。そう思わない?」 S「ん〜。なんとなく解ったような。でも、これだけ上演し続けられて来 たって事は、やっぱり良いんでしょうね。」 E「良いものは何時までたっても良いんですかね。」 A「そうよ。良いものは何時まで経っても良いものよ。」 E「まあ、例外もあるけどね。」 S「イヤ〜、円ちゃんは何時までたっても素敵だよ。」 E「嬉しいですね、そんなこと言われると。イヤ〜。」 A「あたたち、勝手にやってて頂戴。もう〜信じられない。ヤダヤダ。」 E「怒られそうだから帰ろうか?」 S「そうしよ〜う。じゃあ、チェックお願いしま〜す。」 A「ハイハイ。2000円ずつね。ありがとう。それじゃお休み〜。」 E&S「お休みなさ〜い。」 A「ありがと!」 おわり *登場人物は全て仮名です。 |