<新世紀の平和を祈って>の巻

あき(以下A)「あの最後のシーンはちょっと戴けなかったけ ど、久しぶりにいいTVドラマに出会ったわね。」

ノリ(以下N)「あ〜ら、あたしは好きよ、あのシーン。何か 安堵と哀しさとがうまく出ていたと思わない?」

稔(以下M)「明けましておめでとうございま〜す。」

A「あら、稔ちゃん、おめでとう!今年も宜しくね。はい、ここ座って。 今日は何にしようか?」

M「ん〜む、新年だからやっぱり日本酒ですかね。え〜と菊水と八海山が あるんでしたっけ?」

A「そうよ。どっちにする?」

M「ん〜む、八海山でお願いします。」

A「あいよっ!お猪口でいいのよね。」

N「それでさ〜あ、話しは戻るけど、あたしは最後のテーマソング、あれ がいやだったわ。全然ドラマにマッチしてなかったと思わな〜い?」

M「何、話してたんですか?話しの腰を折っちゃいましたかね。」

N「そんな事ないのよ〜ん。ほら、稔ちゃん、見なかった?昨日のTV 、TV東京。」

M「ごめんなさい。テレ東って、ほとんど見た事がないんですよね。」

N「あ〜ら、そうなの。それは残念だわ。せっかく久しぶりにいいドラマ やっていたのに。」

M「なんて言うドラマなんですか?」

A「まあ、単発物なんだけど、<人間の証明2001>ってやつよ。」

M「<人間の証明>?それって森村誠一の、あれですか?それだったら前 に宮本信子の主演で見ましたけど、それとは違うんですか?」

N「だから<人間の証明2001>って言ってるじゃない。何聞いている のよ。耳は何処についているの?」

M「ノリさん、そんなに語気を荒立てなくてもいいと......。」

A「そうよ、ノリちゃん、もっと静かに冷静にね。」

N「あ〜ら、ごめんなさ〜いね。ただ、頭の中がスパッと切り替えられな い子って、時々苛つく事があるのよん。正月ももう半分過ぎたって言うの に、まだ正月ボケしてるんじゃないかって。」

A「まあ、いいじゃないの。」

M「何時もゆっくりなものですから。」

N「そうよね、あたしの方こそごめんなさいねん。でも、感動的だったか らね、すごくあきちゃんと話したかったのよん。」

M「そんなにいいドラマだったんですか、2001ってやつは。」

A「アッシも最近ドラマってあんまり見る事が出来ないでしょ、時間の関 係もあって。でもね、少しはビデオでも撮って見なきゃって思ったもんね 。今回は昔懐かしい大好きな映画を思い出しちゃってビデオに撮ったんだ けどね。」

N「それで、その話しで盛り上がってたわけ。そこに稔ちゃんが来たって 事なのよん。」

M「そんな所に来ちゃったんだ。やっぱりちょっとお邪魔だったかもしれ ませんね。」

A「そんな事ないから気にしないでね。それより、さっき言ってたじゃな い、前にTVで見た事があるって。それはどうだったのよ。」

M「結構良かったですよ。親子の絆みたいな物を感じた記憶がありますけ ど。」

N「そうでしょ、親子の絆。もう、いいんだからん。」

M「それで、2001年版はどうだったんですか?」

A「そうね、アッシは親子の絆って事も感じたけど、まあ、同じ事なんだ けどさ、母親っていう存在を中心にドラマを作ってたわけね、今年のは。」

M「て言うと、キーワードは母親なんですね。」

N「そうなのよん。キーワードは母親。子供がお母さんを想う気持、お母 さんが子供を想う気持がよ〜く解るのよん。」

M「で、話しの筋は同じなんですよね。」

A「そうよ、基本的には変らないんだけど、登場人物が少し違っているの よね。その人達に夫々<母親>っていうキーワードを持たせているわけね 。」

N「例えばね、渡辺謙が演じた刑事の棟居って役も、いしだあゆみの演じ た八杉恭子って役も、それから高島礼子の演じた下田っていう役の刑事も 、みんな<母親>が絡んでいるのよん。勿論、殺されちゃった黒人の少年 は言わなくても分ると思うけど。」

M「具体的にはどういう事なんです?」

A「まず、棟居っていう人の設定はね、沖縄県の出身なんだけど、戦後の 沖縄の悲惨な事件に巻き込まれた一人なのよね。」

M「悲惨な事件って何なんですか?」

N「それはね、思い出しても涙が出てしまうんだけどさあん、アメリカ兵 と恋に落ちた母親がいなくなっちゃうのよね、自分の前から。そして、そ の後でもっと残酷な悲劇が待っているのよん。」

A「妻を捜して病み上がりの夫が米軍の基地周辺を捜し回るんだけど、あ る日、アメリカ兵数人に嬲り殺されちゃうのよね。」

N「イヤ〜ン。あのシーンが頭に甦っちゃったわん。」

A「だから、棟居っていう刑事は今でも異常なほどアメリカ人に対して特 別な感情を持っているっていう事になっているの。」

M「へ〜。それから、いしだあゆみの役はなんでしたっけ」

N「代議士の妻で、自分でも大スターの歌手。でもね、出来の悪い息子を 持っているっていう設定なのよん。まあ、よくあるじゃない。つい最近も 週刊誌やワイドショーを賑わせたでしょ、あんな役なのよん。まあ、息子 を溺愛するあまりに彼の彼女まで殺害しちゃうのよ、あたしには信じられ ないわよねえん。」

A「そして下田刑事っていうのは家庭を持っていて子供もいるんだけど、 刑事っていう職業柄、子供と一緒にいる事の出来る時間がとても少ないの よね。だから子供は淋しいわけね。」

M「そんな設定なんですか。でも、話しの筋は変らない。っていう事は、 いしだあゆみの演じたなんでしたっけ?」

N「八杉恭子よ。も〜う、覚えがわるいんだからん。」

M「そうでした。その八杉恭子が犯人で最後には自殺しちゃうんですね。」

A「ちょっとTVでは違っていて、自殺はしないのよね。ちゃんと取 り調べを受けて自供した、って事になっているんだけどね。」

M「へ〜。じゃあ、あんまり最後は感動しないですよね、それじゃ。」

N「あんた、なに言っているのよん。自殺すればいいって物でもないでし ょうが。ったく、単純なんだからん。」

A「今回は犯人役が主役じゃなかったって事もあるんじゃないの。」

M「犯人役が主役じゃないんですか?今まで、確か映画もありましたよね 。あの映画の主役は誰でしたっけ?」

N「岡田茉莉子よん。それに稔ちゃんがさっき言ってたTV版が宮本 信子。」

M「そうです。それで今度はいしだあゆみ、でしょ。いしだあゆみが主役 じゃないんですか?」

A「だから、今回は<母親>がキーワードなのよ。だからね、犯人が主役 である必要が無い、っていちゃったら言い過ぎかも知れないけど、今回は 犯人よりも、その犯人を追っている刑事が主役といえば主役なのよね。」

N「でもさあ、主役なんて誰でもいいじゃないのおん、って言うくらい良 かったわよねえん。それに考えさせられる台詞もあったしね。」

M「考えさせられる台詞?」

N「そうよん。あたしだって唯唯涙して見てるだけじゃないのよん。ちゃ んと台詞だって聞いているんだからん。」

A「ノリもそう感じた所があったんだ。アッシもね、2〜3箇所あったわ 、考えさせられる所が。」

N「やっぱりねえ。あたし達、同世代だもんねえ。あたしはね、ほら、棟 居がさあ、事件の確信を捜しに沖縄に行くじゃない。あの時ね、事件の鍵 である麦ワラ帽子の置いてあった、もう営業もしていない酒場でさ、死ん じゃったお爺さんの孫娘がいった台詞。<基地はあっても困るし、なくて も困る>ってとこね、あれ、本当に考えさせられちゃったわよん。あたし 達はずっと東京に居るじゃない。だから本当に遠い所の話しみたいに思っ ちゃうけど、ねえ、これからだってどうなるか分らないしさあ、もし東京 が同じ状態だったらって思うとね。あたし達一人一人がもっと真剣に考え なくっちゃいけないのよねえん。」

M「ノリさんて、いつもオネエの五月蝿い人だとばかり思っていたんです けど、見直しちゃいましたよ、ほんとに。」

N「そうれはどうもねえん。<能ある鷹は....>っていうでしょ。 ハハハハハッ。」

A「そうよね、本当にちゃんと考えなくっちゃ。」

N「で、あきちゃんは、どんな台詞が残っているのかしらん。」

A「アッシはね、やっぱり沖縄のシーンなんだけど、棟居が昔沖縄にいた 頃、親がわりになって彼を育てた刑事役の田中邦衛が、棟居を捨てた母親 から来た手紙を彼に渡す時に言った台詞。<何事にも時効はある>ってと こ。時の流れの深さや重さを感じさせられたわね。」

M「みなさん、すっご〜い。見直しちゃった。」

A「アッシ達、伊達に歳はとってませんからね。でも、アッシ、やっぱり 最後のシーンはいらないと思うけどね。」

N「あらま、あたしは感動的なシーンだと思ったけど。」

A「だってノリ、棟居の母親が盲目になっているていう必然性がないじゃ ない。アッシはそう思ったけど。」

N「あたしには感動を何倍にもさせてくれたけどね、あのシーンは。」

M「まあ、まあ、言い合いしないで下さいよ。最後は棟居刑事が母親に会 うシーンで終わるんですか。でも、事件物っていいですよね。私もとても 好きなんですけど、この<人間の証明>にしても、ストハーがストローハ ット、つまり、麦ワラ帽子ですよね。そして、キス ミーが霧積。 謎解きが楽しいっていうか、感心するっていうか。」
N「本当だわねえ。そうよ、もう一度角川の映画が見たくなっちゃたわん 。週末にでもビデオ借りてこようかしらん。」

A「そうよね、見たくなっちゃった、アッシも。でも、今の日本を見てい ると、自分達が如何に幸せかが解るわよね。だから、こういうTVだ とか、映画なんかを見てると、忘れちゃいけない何かを思い出させてくれ る。質の高い物を提供している人達を応援しなくちゃね。」

M「本当ですね。唯単に、笑っているばかりじゃいけませんよね。たまに は感動する物も見たり聞いたりしなきゃね。」

N「本当にそうだわよん。それじゃみんなで、今世紀も平和である様に、 乾杯しましょうよ〜ん。」

M「いいですね。あきちゃんも一緒に。それじゃ、乾杯!」

一同 「かんぱ〜い!!!!」


おわり

*登場人物は全て仮名です。



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#33 "あきの N.Y. お芝居観て歩記2000"の巻
#32 "遠いって辛いわね"の巻
#31 "次回が楽しみ"の巻
#30 "農業は不滅です"の巻
#29 "夏が終わってまた一人"の巻
#28 "秋はやっぱり大人の雰囲気"の巻
#27 "解りやすいが一番"の巻
#26 "夏はやっぱり怪談"の巻
#25 "おとぎ話には夢がある"の巻
#24 "選ぶのが困っちゃう〜"の巻
#23 "自戒の念を込めました"の巻
#22 "ロマンチストは誰?"の巻
#21 "涙でサ・ヨ・ナ・ラ"の巻
#20 "至福の時ってどんな時"の巻
#19 "あなたは誰に?"の巻
#18 "これからはアジアの時代かな?"の巻
#17 "待ち人来らず"の巻
#16 "感動するって素晴らしい"の巻
#15 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2
#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 "分りやすいって素晴らしい"の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
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#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記