<自分の殻を破ろうよ!>の巻

勲(以下 I )「いや〜、早いよね、ったく。」

ケン(以下K)「ほんとっすよ。目が回るくらい早いっすよね。」

あき(以下A)「何に行ってきたのよ。富士急ハイランドかしら? まさか、あんた達、その年で2人してデズニーランド?」

I「あき、デズニーランドじゃなくて、ディズニーランドだからね。」

A「あら、ゴメンなさ〜い。ディズニーランドだったわね。」

K「まあ、あきちゃんは俺達よりチョットだけ年上っすからデズニーでも 仕方ないっすよ。」

A「それで、楽しかったのかしら?アッシね実はすごく好きなのよ、デズ ニーじゃなくて、ディズニーランド。でもさ、一緒に行ってくれる人がい ないじゃない。一人でデズニーじゃなくて、ディズニーランドに行くのも ね〜。」

K「でもディズニーランドに行ってきたわけじゃないんす。」

A「あら、じゃ、何がそんなに早かったのよ。イヤダ〜、あんた達。ここ でそんな話、しなくたって良いのよ。まあ、早さには個人差ってものがあ るじゃない?」

I「何、勘違いしてるんだよ。俺達が行ってきたのはね、プロニューの芝 居だよ、<KABUTO>っていう。」

A「ヤダ〜!プロジェクト ニュートラルの芝居なんだ。」

K「あきちゃんは行ったんすか?」

A「勿論よ。あの劇団の演る芝居、結構面白いし、何時も伺う事にしてい るのよね。」

K「しかし、今回のはホント、早かったっすよね。」

A「早いって、舞台転換の事ね。場面がクルクル替っちゃう。ついて行く のが大変。」

I「まあ、舞台がTV画面でさ、その中でゲームが進行していくって わけだもんね。」

K「面白かったっすよ。俺なんか仕事が終わってからの楽しみったら、飲 む事と、ゲームする事っすから。」

I「本当にコイツったら、家に帰ってきてから風呂も入らないですぐTV の前に座ってゲームに没頭しちゃうんだらね。困ったもんだよな、ったく 。」

A「でも、何時もの事だけど、プロニューってさ、展開が早くて。まして 、今回のはTVゲームっぽかったじゃない。アッシね、やった事がな いのよ、TVゲーム。」

I「今時、珍しい人種だよね、あきって。」

K「まあ、あきちゃんの場合は、閉じ篭っちゃうタイプじゃなくて、どん どん外に出て行くタイプだからっすよね。」

A「アッシにしてみれば、毎日の様にゲームやインターネットだけで過ご してしまう人の方が信じられないけどね。」

K「まあ、俺なんか、どっちかっていうとそっちのタイプっすから。暗い っすかね?俺。」

A「そんな事はないんじゃない。こうやって飲みにも来ているんだし。全 く外の世界を遮断している分けじゃないじゃない。多くの人がそんな事な いと思うけど、中にはいるみたいじゃないの、全くそれだけの人も。」

I「まあ、いるだろうね。でもその人達も、ゲームが終了したときの快感 はある訳だしさ、いいんじゃないの?」

A「アッシが心配する事もないんだけどさ、つまらないじゃない、その世 界だけで時間を過ごすのって。」

K「そうっすか?俺は結構楽しんでますけどね。」

I「違うんだよ、あきの言っている事は。殻に閉じ篭っっちゃう人の事な んだろ?心配しているってのは。」

A「そうなのよ、流石、勲よね。わかってらっしゃる。」
K「あ〜、そうか。殻に閉じ篭っちゃうタイプの人のことなんすね。」

I「そういえば、この前、<蜘蛛女のキス>っていう芝居を観に行ったん だけどね、閉じた殻を開いていくのは自分自身なんだなって、感じたよ。」

A「アッシも10年ぶりで観に行ったけど、やっぱり良く出来た戯曲ね。」

K「俺は....、映画だったら知ってるんすけど、それとは違うんす か?」

A「原作は一緒よ。マヌエル・プイグ。戯曲も彼自身が書いているの。ア ッシ、原作は読んだ事がないからなんとも言えないけど、やっぱり映画は 戯曲とはかなり違ったイメージを私たちにくれたわね。」

I「映画のさ、モリーナ役の役者、あれ、誰だっけ?え〜と....。」

K「ウイリアム・ハートじゃないんすか?確か。」

A「そうよね、流石、観ているだけの事はある。」

I「その、ウイリアム・ハートが良かったよね、いろんな賞も獲ったしさ 。」

A「本当に素晴らしかったわね。でも、舞台で彼があのまま演じたらどう だっかかしらん。アッシはね、舞台の、何て言うか、内に篭った感情の爆 発と抑制は、映画のままだったら表現するのにチト難しいんじゃないかと 思うんだけど。もちろん、彼が舞台に出たら、映画とは違う演技をするで しょうけど。」

I「そうかもな。舞台は牢獄の中だけだもんな。それも2人芝居。台詞を 如何に膨らませて観客に伝えるかが勝負だよな。」

K「俺は舞台を観た事が一度もないから悔しいっすね、観てみたいっすよ 。話しは同じっすよね、さっき言ってたもんな。」

A「そうよ。でもね、話しは牢獄の中だけだから。」

I「俺はモリーナを演った山本 亨が良かったよ。ただもっとゲイら しさを出した方が良かったんじゃなかったかな、って思ったんだけど、あ きはどうだった?」

A「アッシはね、モリーナはかえってあれで良かったと思っているの。て 言うのは、前に村井国夫で観た時はね、本当にこれも良かったんだけど、 外見や仕草からくる印象が強かった、て言うか、強すぎた様な気がしたの ね。」

K「って言うと今回のモリーナは?」

A「内面から来るエネルギーを感じたのよね。あんまりオネエさんぽくな くて。だからこそ、心の優しさが余計に表現できていたと思ったんだけど 。」

I「そうか。だから内に閉じ篭ったヴァレンティンの心を徐々に開放して いく過程を見せるのには良かったんだな。」

A「と、思うのよ。」

K「で、そのヴァレンティンの方は、どうだったんすか?」

I「俺はね、岡本健一の方が好きだったな。初めて観た時は、男闘呼組の 中にもこんなスゲーのが居るって思ったもんな。今回の高橋和也はチョッ ト弱々しく見えちゃった。」

A「アッシは、断然今回の方がお気に入り。確かに高橋和也は弱い、とい うより若いわね、って感じたけど、彼、このところ本当に良い仕事やって るでしょ。それがここに来て、その成果の一片を見せてくれた様な感じが したんだけど。これからが愉しみだねって感じよ。」

K「結構お気に入りっすね、あきちゃん。趣味なんすか?」

A「そんなんじゃないわよ、ヤダ〜。でも、顔もすごく良くなってるし、 何年か前にやった、<エンジェルス・イン・アメリカ>の時と比べると、 雲泥の差で良くなっているわよ、絶対。アッシの予想では、男闘呼組の中 では最後まで残るのはこの人だなって。チョット言い過ぎたかもしれない けど。それに、足がアッシと同じ位に小さかったのよ。」

I「何だよ、それ。」

A「あら、ゴメ〜ン。芝居とは全く関係無かったわね。でも、彼の芝居、 特に2幕に入ってから、自分自身の殻を段々と破いていく過程の演技はと ても良かったわ。アッシも自分の中に閉じ篭っていないで、少しは開いて みようかしらん。」

K「えっ?!あきちゃんて、閉じ篭っちゃうタイプだったんすか?」

A「あらそうよ。さっきはさ、チョットTVゲームやインターネット ばっかりしている人が信じられないみたいな事言ったけど、実は、違う意 味でアッシ、閉じ篭りタイプなのよ。ねえ、勲。」

I「う〜ん、そうだね、あきは。結構自分で居るのが好きそうだし、一人 行動も多いしね。団体行動も嫌いだしな。でもさ、俺に言わせれば、あき は自分で殻作っているよな。」

A「何だって!って言いたい所だけどさ、本当なのよね。自分で殻作って る。だからあんまり人の事言えないのよ。でも、今回<蜘蛛女のキス>を あらためて観たら、自分で作ってしまった殻を少しずつ破いて行こうかな って。新世紀に入った事だしね。」

K「殻って、やっぱり自分で作っちゃうんすかね。俺も知らない内に殻作 ってるかも知れないっすよ。」

I「誰にでもあるんじゃないの?そんな事。だから、気が付いた時には、 焦らずにゆっくりとその殻を破っていけば良いんじゃないのかな。」

A「そうよね、それで良いのよ。じゃあ、アッシも、早速明日TV ゲーム買いに行かなくっちゃ。」

K「え〜っ!行動、早いっすよね。」

I「まあ、それで、ハマリ過ぎなきゃいいけどね。」

A「新世紀ですもん。アッシも新しい世界を見なきゃ。」

I「せいぜい頑張って下さいよ。」

A「やってみるわ!チョット勲。今度一緒にゲーム買いに行きましょうよ 。それでさ、どっちが早く攻略出来るか賭けましょうよ。」

K「あきちゃん、幸せっすね。とっても殻に閉じ篭る性格とは思えないす っけど。」

I「本当だよな。」

A「え〜!!?」


おわり

*登場人物は全て仮名です。

今回紹介したお芝居、劇団の予定

*プロジェクト ニュートラル
     次回公演は2月24日(土曜日)
     <GET BACK> 渋谷クラブegg site 
     1日限りの公演です。
*t.p.t. <蜘蛛女のキス>
     東京公演は1/28で終了。
     大阪公演 2/1〜4 エイトスタジオ



Back Number!

#35 "新世紀の平和を祈って"の巻
#34 "良いものはやっぱりいいわ"の巻
#33 "あきの N.Y. お芝居観て歩記2000"の巻
#32 "遠いって辛いわね"の巻
#31 "次回が楽しみ"の巻
#30 "農業は不滅です"の巻
#29 "夏が終わってまた一人"の巻
#28 "秋はやっぱり大人の雰囲気"の巻
#27 "解りやすいが一番"の巻
#26 "夏はやっぱり怪談"の巻
#25 "おとぎ話には夢がある"の巻
#24 "選ぶのが困っちゃう〜"の巻
#23 "自戒の念を込めました"の巻
#22 "ロマンチストは誰?"の巻
#21 "涙でサ・ヨ・ナ・ラ"の巻
#20 "至福の時ってどんな時"の巻
#19 "あなたは誰に?"の巻
#18 "これからはアジアの時代かな?"の巻
#17 "待ち人来らず"の巻
#16 "感動するって素晴らしい"の巻
#15 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2
#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 "分りやすいって素晴らしい"の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記