<足を運ぼう劇場に!>の巻

あき(以下A)「え〜と、E-1 番っと。」

卓巳(以下T)「ありましたよ、あきさん、2等ですよ。」

A「え〜!あった、あった。久しぶりだわ、くじにあたるんなんて。」

T「何なんでしょうね、それ。」

A「あんた、さっき聞いてなかったの?」

T「すんません。トイレ行きたかったもんですから。」

A「3等が南河内万歳一座特製、来年3月まで使えるカレンダー。1等が 南河内万歳一座特製座布団。そして、アッシが当たった2等が南河内万歳 一座特製靴袋。」

T「靴袋って、何するんですか?」

A「何するって、靴入れるのよ。(といって靴袋を取り出す)イヤ〜!派 手な袋だ事。ねえ、見てよ。」

T「ほんと、派手ですね。でも何時使うんですかね、これ。」

A「そうか、卓巳たちはそんな時代知らないもんね。きっと椅子席しか経 験ないだろうし。」

T「椅子席しかって?」

A「ほら、今でも唐十郎のやっている《状況劇場》とかさ、歌舞伎座の両 端の席とか、そうじゃなくても、小劇場なんか行くとあるじゃない、〔桟 敷〕って言う席。」

T「あ〜あ〜。指定席じゃない自由席なんかの時ですね、舞台のすぐ前に つめ合って座る所ですね。」

A「そうそう。あそこよ。アッシ等、若い時はお金もなかったし、それに 人々も色々な意味で飢えていた時代じゃない。劇場にも人が本当に溢れか えっていたのよ。そんな時はね、指定で観なくても、とにかくその芝居が 観たい、役者の人と一緒に、その芝居に同化したいって思う人が沢山いた のよね。それで靴袋。」

T「えっ?それでって.....。」

A「だからさ、桟敷だと体育座りになるわけじゃない。まあ、歌舞伎座な んかは別だけど。そうするとさ、前の人や横の人に足がぶつかる分けよね 。靴履いたままだと服が汚れちゃうでしょ。御行儀の問題よね。それに、 靴がそのまま脱いであったら、今度は桟敷が汚れちゃう。」

T「あ〜。やっと解りました。それで靴袋なんだ。」

A「ま〜、時間がかかる事だわね、ったく。」

T「ところで、南河内万歳一座、今年でちょっと休むらしいですね。」

A「そうなのよね。あそこの劇団、10年前もそうだったんだけど、10 年に一度、1年間休団するのよ。」

T「今日の芝居〈新作!錆びたナイフ〉みたいに、みんなで健康を考える 1年にするんですかね、団員も年齢的に高くなってきたし。」

A「あら、みんなアッシより歳下よ。」

T「でも、あきちゃん、四捨五入したら〇〇代ですよね。」

A「お黙り!!いいのよ、気持、気持が若ければ。」

T「今日の芝居みたいに、健康、健康って、いろいろやっているんじゃな いんです?」

A「そういう意味ではチョット考えさせられちゃたけど。」

T「お酒も毎日飲んでいる分けだしさ。何か特別な事、してるんですか?」

A「アッシさ、大病している割には、これと言ってやってないのよね。し いて言えば、ヴィタミンとウコン位かしらね。毎日飲んでるんだけど。」

T「えっ?!!!ウ〇コをですか?」

A「何、デカイ声出してるのよ。ウコンよ、ウコン。肝臓に良いっていう じゃない。」

T「そうですよね、安心した。あきちゃんもとうとうそっちの趣味の人に なっちゃったのかな?って思っちゃったよ。」

A「でも、健康のバロメータじゃない。しっかり毎日確認しなきゃ。」

T「だけど、健康に良いからって、何でもやってて良いんでしょうかね?」

A「そうよね。昼間にさ、《おもいっきり〜》ていうの、あるじゃない。 あれ見てると、何を食べたら良いのか判らなくなっちゃうのよ。そうでし ょ。」

T「解りますよ、それ。今日はこれが何かに効くって言うし、次の日は良 くないって言ってるし。」

A「結局、今日の芝居に出てきた家族の結論、健康、健康って考えるのを 止めちゃえば良いのかしらね。」

T「まあ、それは考え過ぎですよ。健康については、やっぱりちゃんと考 えなきゃダメですよ。それに、TVって、結構無責任じゃない。」

A「良い事言うじゃない。卓巳ちゃん、見直しちゃったわよ。」

T「まあ、俺も文化人気どりで芝居観てる分けじゃないからね。」

A「そうよね。お金払ってちゃんと劇場に通っているんだもんね。」

T「そうですよ。勿論、TVもVIDEOも好きですけど、それだけ じゃ、何か毒されそうでね。」

A「へ〜。卓巳ちゃん、益々見直しちゃったわ。この前ね、野田秀樹の一 人芝居《2001人芝居》って行ってきたんだけどね、映像を巧みに使っ た芝居だったんだけど、心の中でクスクス笑えるのよね、その内容が。」

T「観たいんですよ。頑張って電話したんだけど、手に入らなかったんだ よね。それで、どんな内容なの?」

A「TVに対する批判と言うより、それに喜んでいる人々への警鐘っ て言うのかしらん。」

T「でも、TVが嫌だったら見なきゃいいじゃないか、って言う人も いるんでしょうけど。」

A「そうなのよ。でもさ、インターネットも同じだけど、もう無視できな いじゃない。知らない間に自分の中に入り込んじゃう。それに、日本人は 特にその傾向があると思うんだけど、ただ単に笑えたり、如何にも泣かせ る様に作られていたり、とくにバラエティー番組や、ワイドショーなんか 、とっても下品だったりね。そういうの好きじゃない。」

T「まあ、N〇Kを除いたら無料な分けだし。勿論、有料の場 合もチョットはあるけど。番組を作る側の問題も多々あるんじゃないのか な。」

A「そうなのよね。芝居にしても映画にしても、劇場や映画館に行くには お金がかかる分けでしょ。だから、たとえつまらなかったとしても、そこ には無駄だったな、とか、金返せ、みたいな感情が残るじゃない。勿論、 良かったな、って言うのもあるわけでしょ。でも、同じものをTVで 見たとしたら、どうなんだろうね。」

T「やっぱり集中して見ないでしょう、きっと。CMもあるし、VIDEO の時なんか、途中でトイレに行けるしね。劇場や映画館ではそうはいかな い。よっぽど我慢出来なくなったら別だけど。それに画面だと当り前だけ ど、平面だから奥行きとかが全く判らないし。映画の場合なんか、上下左 右がチョット切れちゃったりして。」

A「そうなのね。TVって消えちゃう物が多すぎると思うのよ、アッ シは。時々は感動を誘ったり、考えさせられる番組もあるけどね。芝居や 映画は、それを作るのに膨大な時間を費やしている分けじゃない。だから お金を払って観て、たとえ失敗したなと思っても、また劇場に足を運ぶわ よね。TVは限られた時間の中で作っていく。その事は素晴らしいと 思うけど、さっきも言ったけど、作品自体が安易に作られ過ぎている様な 気がするのよね。作り手は勿論一所懸命なんだろうけど。」

T「だけど、あきちゃんがさっき言った様に、もう拒絶出来ないしさ。俺 自身はね、毒されそうになった自分自身を方向修正する為に、って言うと 大袈裟に聞こえるかもしれないけど、そのために劇場に通うんだよね。ま ずは野田秀樹の芝居って言いたいけど、チケット無いしな。」

A「立見があるかもしれないから問い合わせてみたら?」

T「うっそ〜!ほんと?それじゃすぐに電話してみよう〜っと。」

A「取れると良いわね。それにしてもチョット寒くない?」

T「そりゃそうですよ。こんな路上で立ち話30分もしているんだからさ 。」

A「そろそろ帰ろうか?アッシお店開けなきゃいけないしね。」

T「そうだよ。俺も帰って観劇日記付けなきゃ。」

A「あら!そんなの付けてるんだ。ちゃんと書いておいてよ。後で分らな い事があったら連絡するからね。」

T「ハ〜イ。分りました。充電期間の終わる万歳一座を愉しみにして帰ろ うっと。またお店にも行きますね。」

A「それじゃね。さよなら!また劇場でも会いましょうね!」


おわり

今回紹介した芝居(劇団)の予定
*南河内万歳一座
     2/18まで、大阪近鉄劇場。その後1年間の休団。
     個人個人で、客演や企画物あり。

*野田地図スペシャルステージ「2001人芝居」
     2/28まで   青山スパイラルホール



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#36 "自分の殻を破ろうよ!"の巻
#35 "新世紀の平和を祈って"の巻
#34 "良いものはやっぱりいいわ"の巻
#33 "あきの N.Y. お芝居観て歩記2000"の巻
#32 "遠いって辛いわね"の巻
#31 "次回が楽しみ"の巻
#30 "農業は不滅です"の巻
#29 "夏が終わってまた一人"の巻
#28 "秋はやっぱり大人の雰囲気"の巻
#27 "解りやすいが一番"の巻
#26 "夏はやっぱり怪談"の巻
#25 "おとぎ話には夢がある"の巻
#24 "選ぶのが困っちゃう〜"の巻
#23 "自戒の念を込めました"の巻
#22 "ロマンチストは誰?"の巻
#21 "涙でサ・ヨ・ナ・ラ"の巻
#20 "至福の時ってどんな時"の巻
#19 "あなたは誰に?"の巻
#18 "これからはアジアの時代かな?"の巻
#17 "待ち人来らず"の巻
#16 "感動するって素晴らしい"の巻
#15 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.2
#14 あきのN.Y.お芝居観て歩記 ′99 vol.1
#13 "分りやすいって素晴らしい"の巻
#12 "芸術の秋だよね"の巻 その2
#11 "芸術の秋だよね"の巻 その1
#10 "夢をみようよ"の巻
#9 "暑い時は映画館"の巻
#8 "劇場へ行こう!"の巻
#7 "戦争はおそろしいよね"の巻
#6 "あんたも漫画がすきなのね"の巻
#5 "あんたの涙は.....?"の巻
#4 "安心が一番"の巻
#3 "本当に生はいいんだから"の巻
#2 "小さいことはいいことだ"の巻
#1 アキのニューヨークお芝居観て歩記